エレンオルンのカレー屋開業顛末記&カレー漫画レビュー

漫画とカレー好きが高じてカレー漫画を読んでるうちにまとめたくなりました

第5回 私立味狩り学園 カレー回は4人全員美味そうなカレーを作る

私立味狩り学園 作画谷上敏夫 原作あかねこが1987年

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 第5回は知る人ぞ知るチャンピオン料理漫画の名作私立味狩り学園。知識はないが野生的なひらめきと料理の腕を持つ主人公天堂竜馬が、様々な相手と料理勝負を繰り広げる少年漫画らしいバトル系料理漫画なんですが、いくつか特筆すべき点があります。

 

 命懸けで料理をすることあたりは80年代料理漫画ではなくはないですが、料理漫画には珍しく、初めに出てくる長髪美形の天才エリート料理人鬼崎法人が最後まで宿命のライバルとして何度も戦うこと。

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 料理対決のお題が、卵と4つの素材で全ての栄養素が入った完全栄養食を作る事や、

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五味(甘味・辛味・塩味・酸味・苦味)、五法(煮物・焼き物・蒸し物・揚げ物・生物)、五色(黄色・赤色・青色・黒色・白色)を全て使った料理を作る事、同じ麺とつゆを使って他の料理人より美味しい素麺料理を作る事、あらゆる料理を食べたことがある審査員の食べたことのない料理を作る事、などバラエティー豊かであること。

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 その誰も食べたことのない料理の回答が、一応納得できるもので尚且つぶっ飛んでいること。

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 誰も食べたことのない料理、子供心に無茶と思いつつ説得力はありました。

 

 序盤はちと辛いですが、最初のコンテスト以降は面白いのでぜひ読んでいただきたい作品です。

 

 味狩り学園のカレー回は、日本料理界の首領、鍋将軍が古の料理人「包丁」が岩に突き刺した包丁の持ち主に相応しい料理人(岩を切れるほどの技量を持つ現代最高の料理人を決める大会「包丁の包丁」争奪戦の残り4人となってからの競技。

 それまでも、生きた魚のフライを作れ、はるか空中にぶら下がった肉の中から上等な肉を手に入れろ、プラスチックでできた米何百俵の中に一俵だけ忍ばせてある本物の米を手に入れろ、そのプラスチックを燃やした業火の山を火力として炊き込みご飯を作れ、など「それ本当に料理の腕関係ある?」という課題が続きますが、カレー回は、天秤で空中に釣られた釣り籠の中で料理を行い、蒸発する水や補給する米や材料が天秤のバランスを崩すと落下して即死亡という状態での調理。

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 20キロ丁度のカレーを作らなければならず、材料の管理、適切な量作ることも料理人の脂質ということなのですが……。どう考えてもやりすぎです。参加者は何を考えてこの大会に出場しているんだ……。

 カラスが乗るとバランスが崩れるので粉塵爆発でカラスを追い払った結果、カゴが落ちそうになったりするんですがこれで死んだら全く無駄死にです。

 

 シチュエーションはともかくとして作るカレーはうまそうで、主人公竜馬はじっくり玉ねぎを炒め、すりおろしたにんじんとジャガイモパパイヤ、バナナを混ぜ込んだ深みのある味わいのルーに、旨みの凝縮した筋肉の発達した闘牛のスネ肉と肩肉をメイン具材に。ライスはターメリックサフランを炊き込み、薬味は薄切りにした大根にわさびを混ぜ込んだもの、ルーにはフランスパンをすりおろしてとろみをつけるという街の定食屋出自らしい欧風カレー。この頃から、メイン具材のみならず、ライス、薬味まで気を回しているのは素晴らしい。

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 ライバル鬼崎はカレー勝負の天才ライバルの王道スパイスを使いこなし、海水を含んだ牧草を食べて育った、薄く塩味の滲み出る最高の子羊アニョー・ド・プレサレを使ったカレー。ライスは牛乳で炊き上げ、薬味はあんずのドライフルーツの甘酢漬け。

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 中国人料理人大全は鶏ガラと生姜ニンジン茴香などのスパイスでスープをとり、干し鮑、干しエビを戻して味に深みをつけたもので、ライスはカレーを引き立たせる甘みをつけるために干しぶどうを炊き込み、薬味はらっきょうとパセリのみじん切りの和物。

 

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 黒マントはイカのはらわた、ウニ、タラコを潰したペーストにスパイスを入れカレーソースを作り、辛い味とよく合うカリカリとした歯触りが絶品の子牛の腎臓ロニョンがメイン具材。米はバターで炒めて外米の味のクセをとり、薬味はイカのみじん切りを湯通しして裏漉しした梅と和えたもの。

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 4人とも特徴を出しつつ美味そうに表現しており、カレー回の中でも屈指の食べたいカレーに仕上がっています。

 なんとなく美味そうの表現が上手い漫画でした。